桂木姫の話、三の巻
小説コン、写メコンに出した物を膨らまし詐欺。
ある有名童話をベースの平安パラレル(凄い勢いで脱線ぎみ)、出来たら上げる感じで行きます。
言葉の分からない所に辞書を引くのが億劫で今の言葉を使ってたり、適当に濁してたりする部分があるのはご愛敬。
あくまでパラレルなので信じちゃいけません。古典や歴史で書いたらマイナス確実です。
※ここからblogアップ分です。
once upon a time.
「しかし貴様、思いの外によく食うな……」
「うっ……ぐっん?」
箸を使うのももどかしい様子で膳を平らげていく姫は、次の食事を大急ぎで口に放り込み顔を上げました。
その兎や何かのような様子に、姫の正面で脇息に凭れたままのネウロは苦笑を漏らしました。
「なぁに、貶してはいない。呆れているだけだから気にするな」
「けふっ。それ……どう意味が違うのさ?」
「聞きたいか?」
屋敷に着くまでの道のりから今までに「我が輩の拾い物だから、どう扱おうと自由だ」という言葉と共に、散々叩かれたり投げられしたせいでそれだけで身を竦めました
実際、この夕餉の最初にネウロの膳までもを狙って檜扇で鼻先を叩かれたのでした。
淡い明かりに照らされたその笑みに僅かな恥じらいと悪寒とを同時に感じつつ、姫はブンブンと首を振りました。
「遠慮しときます…ご飯くらい幸せに食べたいもんっ」
ふてくされ、そう文句を言いつつも手と口の動きの止まらない姫に、ネウロの笑いは益々と深まって行きました。 その様子に、姫は顔を赤くし、亀のように更に首を竦めて俯きます。
姫は元々、人の何十倍も食欲が旺盛でしたが、流石に初対面の人間の前でこの食欲を晒す事に、人よりやや少ないとはいえ恥じらいの無い訳ではありません。
実際、この食欲によって、幼少のみぎりには心配した父君に陰陽師を呼ばれかけた事もありましたので、姫は人前で物を食べる事に、とみに初対面の人間との会食には慎重になっていました。
また、母君がはかなくなり、父君に引き取られる事が決まってからは、父君に迷惑や恥をかけないようにという気持ちと寂しさとで胸が一杯になり、人並みにさえ食事を取れず、皆を心配させもしました。
なのに、何故、この、好奇の視線と意固地の悪さを隠さず、姫を珍獣か何かのように面白がるネウロの前で、こうして平気で食事をする事が出来るのでしょう。
「ム、何だ物欲しそうな目をして……。そんなにまた、我が輩に扇で打たれたいか?」
内容こそは乱暴ですが、心底楽しそうな響きの声に、姫は今度はしっかりと顔を上げ、緑の目を見つめ、そっと首を振って答えました。
「違うよ……」
出会ってからというもの、情けない泣き顔は見られ、小脇に抱えられ、泥だらけにされと、一生分の恥じらいを使い果たしてしまったかのような目に遭いました。
だからでしょうか。こうしてご飯を食べる事にも、顔をじっと見られる事にも。
姫は、何の気まずさも感じなくなっておりました。
寧ろ、己の身の危うさや寂しささえも忘れるような安らぎさえも覚え始めているように感じるのです。
「ただ……誰かとご飯を食べて、こんなに美味しかったのは、何時ぶりだろうなって思って……」
姫のその返答に、ネウロは何故か、姫が膳に手を付けた時よりも尚、呆れた顔をして吐息を漏らしました。
「そんなもの、当たり前に決まっているだろう。我が輩の食う物が貴様等の其れよりも不味ければ、廚の奴は今すぐ荷物をまとめねばならぬだろうさ」
「そんな意味じゃないってば!」
確かに膳に並ぶのは、今まで姫の食べた事のない程に珍しく、量以上に、味も申し分ありませんでしたが。
「ム? 珍妙な事を言うな……では、一体どういう意味だ」
「それは……ええとっ」
その理由を答えようとした姫は、何故か理由の分からない恥じらいを覚えて俯きました。
「答えぬつもりなら、直接その身に聞いてやろうか」
「ちょっ、何で手をわさわさと……てか、頭掴むなっ!」
ネウロのその詮索は、御簾の向こうから声を掛けたあかねによって中断されました。
ぼそぼそと交わされる言葉は姫に聞こえないほどに小さな物でした。
「あぁ餅か……まぁ、必要になれば言うから今は放っておけ」
その一言だけを聞き取って涎を垂らしたが為に、姫は再び、鼻先を扇で打たれる事となったのでした。
適当な用語解説:
餅はまぁ、餅ですよね。
date:不明