CLAP LOG 04


26〜30まで(old↑ new↓)
  1. 「だってあんたは『忘却』を恐れない」 – ネウヤコ/某漫画から思いついた話。「人の思いもまた巡るのだ」
  2. 春『夏』秋冬> – ネウヤコ/「春の味覚」とで春夏秋冬四部作になる予定だった話。
  3. くじらの歌 – ネウロとヤコ/春頃の書きかけ
  4. カササギ – ネウヤコと匪口/七夕ネタの没オチ。*カササギは天の川に橋を架けると言われる鳥。
  5. 魔人探偵脳噛ネウロの憂鬱@〜A – 「涼宮ハルヒの憂鬱」改変

  6. 魔人探偵脳噛ネウロの憂鬱【オマケ】 – 上を元にして文体パロ(本編に無いシーン挿入)

「だってあんたは『忘却』を恐れない」

『さて、問題です。この世界で一番強く残酷で、同時にとても慈悲深く、
    あらゆる技巧を尽くしたどんなに美しい物も、見るに耐えない程に醜い物も、
全て平等に飲み込んで、ゆっくりと咀嚼して行く物はなんでしょう?』
自分に背を向け鉄柵に捕まり空を見上げる少女が、高い声で歌うように囁いた謎掛けに、魔人は溜息混じりの声を返した。
簡単すぎて、腹の足しにもならん。と。
「…答えは『時間』だろう?」
「ん、一応は正解」
 そう言って、にっと口端を吊り上げて「してやったり」という風な笑顔。
後ろから吹いた突風にふぁりと煽られ、膝上制服のスカートと、肩にかかる淡い色の髪が揺れる。

自分の答えにある程度の確信を持っていたネウロにとって少女のその反応は、不可思議で不愉快な物でしか無かった。
「ほう…何処か間違っていたか?」
なのでそう聞いた声は穏やかでも、浮かべた笑顔には不機嫌な時特有の凶悪さが滲んでいて。
しかし少女はそれに臆する事無く言葉を続ける。
「だってアンタ、『理由』を説明出来ないじゃない」
「…理由?」
弥子の言葉にネウロはきょとんと首を傾げ、弥子はそれを見て満足そうに笑い、言葉を続ける。
「そっ。……ソレが何で優しくて、そして何で残酷か、今のアンタは説明出来る?」

date:2006.06.13

春『夏』秋冬

ヒチャ……
ブラインドを下げた薄暗い室内に水音が響く。
「ねぇ、ネウロ……」
弥子は話しながら、濡れた片手をゆっくり延ばす。
その細い指先から、ポタリと水滴が垂れた。
「さすがにさ――」

床に座っているので目の前に立つネウロに、弥子の手は届かない。
それでも、何とか服を掴もうと必死に指先を延ばす弥子をネウロはニヤニヤと見下ろす。
そんなネウロを睨み付け、暫くそれを続けた後に、小さく一つ溜息を吐き、ゆっくりと右手を下ろした。
「……女子高生に、コレはどうかと思うんだけど」
リノリウムの床に置かれた子供用のビニールプールに、弥子は両膝を曲げて下着姿で座っていた。
とはいっても、流石は子供向け。お尻と、身体を支える両の手の平と、足首までしか漬っていない。
「黙れ。『熱いからプールに行きたい』と言ったのは貴様だろう」
不満気に自分を見上げる弥子に、ネウロをにやにや笑って言う。
ご丁寧にも、片手で弥子の頭をしっかり押さえ、立ち上がれ無い状態にして。
「言ったけどさぁ――」
――こんな物を持って来るとは、流石に弥子も予想していなかった。
一体何処で調達して来たのだろうか?……それを考えるのが少し怖い。
「ひゃっ!!」
突然襲った冷たさに、思わず悲鳴を上げる。コップで頭から水をかけられたのだ。
「こうすると貧相が余計に目立つな」
頭を抱え、背中を丸めた弥子に、ネウロは笑いながら言う。
(この野郎っ……)
弥子はその発言にカチンと来て、濡れた右手を思い切り振り上げた。
指の先から飛んだ水滴が青いスーツに点々と濃紺の染みを作り、ついでに魔人の頬に跳ねた。

date:2006.06.22

くじらの歌

『鯨は歌を歌う』弥子が最初にそれを知ったのは、一体いつであったか。
幼い頃誰かに聞いたのかも知れないし、図鑑か何かで見たのかも知れない。
結果的に、生きるに必要のないその知識は、他の記憶と同様に、脳髄の奥に埋もれていた。
「鯨とは歌を歌う生き物らしいな」
――聞き慣れた低い声がそう言うまでは。

「知ってるよ、それくらい」
弥子はソファに座り、床に目線を合わせたままそう言った。
「ほう、そうか」と、わざとらしく
ネウロはバタンと大げさな音を立て、机に広げていた海洋図鑑を閉じた。
date:2006.08.19

カササギ

「……てかさ、鵲かよ…俺」
――7月7日、外は憎らしい位の快晴。何故だか夢見が悪かった上に、
机に突っ伏して寝てたから、顔を上げた途端、拭う間も無く頬を涙が伝った。

そこで普段から口煩い上司と目が合ってしまったのも、
その追求を逃れる口実として、前々から約束していた、お茶へと誘った女子高生が助手という保護者を同伴してきたのも、
きっと、日ごろの自分の行いが悪いからだろう。
胸中でそう呟き、匪口は小さく溜め息を吐いた。
見上げた夏空の青さと、こっちに向かって一生懸命に手を振って笑う少女の笑顔が、
ここ最近を室内でPCの画面と向き合う事に費やしていた匪口には、本来よりも眩しく思えた。

「なぁお前、桂木置いて、どっか行ったりするなよ」

七夕限定だというスイーツを美味しそうに頬張る幸せそうな笑顔と、
その直後、それを派手にぶちまけて(どうやらテーブルの下辺りから助手にちょっかいかけられたらしい)、
真っ青な顔と、絶望滲んだ声色での「ごめんなさい」に、今朝の夢の最後が重なって、
ほぼ無意識に発してしまった。
自分で言っといて余りの支離滅裂さに内心呆れていると、
「……先生は独占欲の強いお方ですから、きっと僕を離さないと思います」
「はぁっ!?ちょっ、何勝手なk…」
瞬間、弾かれたように顔を上げた少女は
耳元に早口で何か囁かれ一瞬眼を見開いて、再び無言で俯いた。
――唇を噛み締め、悔しそうに歪めた顔。ちらと見えたその頬が少し赤かったのは
……見なかった事にしよう。
夢でも現実でも鵲でしかない自分に、自嘲ぎみな溜め息を一つ。
「桂木、さっき零した奴買ってやろうか?」
「えぇっ!? 本当にっ!」
顔を上げ、さっきまでの余韻など微塵も無くパッと華やぐ笑顔。
それと同時に頬に刺さる冷たい視線。全く、独占欲強いのはどっちだよ……。
「んじゃ、店員呼ぶか」
「はいっ!」
――こん位の役得、別にいいだろ?
そう言う代わりに、かなり顔を歪ませて笑ってやった。

date:2006.08.21

魔人探偵脳噛ネウロの憂鬱

@(キョン:弥子、ハルヒ:ネウロ、みくる:吾代)
「すると何?アンタはこの……吾代さんが強面で頭悪そうだからって理由なだけでここに連れて来たの?」
「……そうだが?」
真性のアホだ、この魔人。

A(キョン:吾代、ハルヒ:ネウロ、みくる:弥子(長門さん:あかねちゃん)
閉めたドアにもたれかかった俺に、
「ぎゃぁっ!」「助けて吾代さんっ、ここ開けてっ!」 「だめぇっ!せめて自分で脱ぐからぁ……」
などと色気の欠片も無い所長の悲痛そのものの悲鳴と(そのうち一つはあえて無視した)
「ほれ、さっさと脱げ」「助けなど求めるだけ無駄だ…」「最初から素直にそうすれば良いのだ」
という、化け物の余裕たっぷりの声が交互に聞こえてきた。
というか……会話の途中途中に頬を
したたかに打つような鈍い音が聞こえたのは、気のせいか?
date:2006.08.30

魔人探偵脳噛ネウロの憂鬱【オマケ】

「入っていいぞ」
少々ためらいがちに事務所に戻った俺の目が映し出したもの、
それは、若干ボリュームに欠けるバニーガールだった。
美しい曲線を描く細い足は置いといて、問題は膨らみの足りない胸――
「おいっ!お前胸っ!?」
「え……ギャァッ!」
色気無い悲鳴を上げ、所長は両腕で胸を抱くようにして蹲った。
「ふむ、やはりカップが緩かったか……」
その様を見下ろしながら、化け物は当然のようにのたまう。
…最初にサイズ確認しとけよ。
というわけで俺は、所長の悲鳴を背中に聞きながら、再び廊下に逆戻りした。
date:2006.08.30



Text by 烏(karasu)