翅「とぉさま、ただいまー」
ネ「む、シナか。ヤコはどうした?」
翅「んと、かぁさまはねー、たべもののところのね、ちいさいの、あーんってしてくれるひとのとこ。
シナはね、2こでがまんしたんだけど、かぁさまは……だって、かぁさまだからね、あのね……」
ネ「そうかそうか、つまり、弥子は貴様の事を忘れ、食欲に負けて試食のコーナーに居座り続けていると……。
恐らく、喰い尽くすまでは戻らんだろうが……最終的に、喰った倍は買うのだからな。
2、3分放置していたとしても、大した損害は無いだろう……。全く、仕方の無い母親だな」
翅「ふぅ、ほんとねぇ―」
ネ「……さぁてシナ。単細胞の母親と違い、きちんと自律の出来た貴様に、父上が褒美を与えてやるとしよう。……何が良いか?」
翅「んとね、えほんがいい!!」
ネ「よし、では早速書店へ行って選んでやろう」
翅「うんっ! ……とぉさま、かったの、よんでくれる?」
ネ「無論だ」
翅「やったぁ! とぉさま大好き!!」
*
*
弥「ネウロー、翅那、今日はちゃんと寝――…って。あーあ、一緒になって寝てるよ……」
ネ「スゥ……」
翅「ん、くふふっ……」
弥「全く――二人してどんな夢を見てるんだか……」
ネウロが読んであげた絵本は、『ねないこ だれだ』(せな けいこ)。
出版以来、世代を超えて幼児のトラウマ作りに一役買っている(笑)本の一つです。
父と娘は表面上は仲が悪そうに見えて、実は一番の似たもの同士で、たまに弥子が寂しくなるくらい意気投合している。
……ように書けてるといいなぁ、と思う。