父と娘の関係


拍手08のつづきであり続編。会話文だけの上にかなり長め。(区切りない連作)
子どもの設定/名前=翅那【シナ】/娘。見事なまでにオリキャラ。名前の由来は07に。

fater's side


翅「とぉさま、ただいまー」

ネ「む、シナか。ヤコはどうした?」
翅「んと、かぁさまはねー、たべもののところのね、ちいさいの、あーんってしてくれるひとのとこ。
 シナはね、2こでがまんしたんだけど、かぁさまは……だって、かぁさまだからね、あのね……」

ネ「そうかそうか、つまり、弥子は貴様の事を忘れ、食欲に負けて試食のコーナーに居座り続けていると……。
 恐らく、喰い尽くすまでは戻らんだろうが……最終的に、喰った倍は買うのだからな。
2、3分放置していたとしても、大した損害は無いだろう……。全く、仕方の無い母親だな」

翅「ふぅ、ほんとねぇ―」

ネ「……さぁてシナ。単細胞の母親と違い、きちんと自律の出来た貴様に、父上が褒美を与えてやるとしよう。……何が良いか?」

翅「んとね、えほんがいい!!」

ネ「よし、では早速書店へ行って選んでやろう」

翅「うんっ! ……とぉさま、かったの、よんでくれる?」

ネ「無論だ」

翅「やったぁ! とぉさま大好き!!」




その晩――


翅「ひっく、かぁさま〜」

弥「どうしたの翅那! こんな遅くに……」

翅「こわくて、ねむれないの……っく。ねるまえに、とぉさまがよんてくれたえほんでね、
ねないこはおばけのせかいへつれてかれちゃうって……っぐ。
 うわあぁん、シナ、おばけのこになりたくない――っ!!」

弥「ハイハイ、大丈夫だから泣かないの。ほら、おいで」

翅「うえっ……ひっ…く」
弥「……あんた、寝る前に何読み聞かせたのよ? 明らかに軽いトラウマになってんじゃん、コレ……」

ネ「我が輩、可愛い娘の躾の一環になればと思っただけなのだが……」

弥「うわぁ……わざとらしい顔で、もっともらしいコト言いやがったよ、このドSめが……」




次の日の夜――


ネ「シ……」

翅「やああぁ! とうさまきらい!! こわいはなしするからやあっ!」

ネ「む……――そうか、残念だな。折角、貴様の言う「お化け」とやらに口ぞえしてやろうと思ったのだがな……」

翅「ぅ……ほんとう?」

ネ「ああ本当さ。――『コレは正真正銘、我が輩の血縁の者であるから、見かけても見逃すように』とな」

翅「……ふくろうにも、ミミズクにも?」

ネ「勿論、言ってやろうとも――魔界の生き物と比べれば、この世の生物など恐れるに足らん」

翅「マカイ? ねぇとうさま、マカイのいきものはどんなの?」

ネ「そうだな――」


*


弥「ネウロー、翅那、今日はちゃんと寝――…って。あーあ、一緒になって寝てるよ……」

ネ「スゥ……」

翅「ん、くふふっ……」

弥「全く――二人してどんな夢を見てるんだか……」


ネウロが読んであげた絵本は、『ねないこ だれだ』(せな けいこ)。
出版以来、世代を超えて幼児のトラウマ作りに一役買っている(笑)本の一つです。
父と娘は表面上は仲が悪そうに見えて、実は一番の似たもの同士で、たまに弥子が寂しくなるくらい意気投合している。
……ように書けてるといいなぁ、と思う。


date:2007.11.13



Text by 烏(karasu)