寝てる間に…


・side Neuro(〜明け方)
*「side yako」の続き。なので先にそちらをどうぞ。

勝負はついて…。


唐突に、深い緑の瞳は開いた。
それは緩慢な動きでゆったりと、白く染まり始めた室内を見回して行く。

ブラインドの隙間から見える街灯と、暗い水色をした、日の出前の空。
点けたまま放置され、ザ―ザ―と砂嵐を流すテレビに、
主電源の入ったまま放置された、DVD再生の為に使われていたゲーム機。
傍らに視線を移せば、自分にかかっているかけた覚えの無い毛布。

それの柔らかな肌触りを共有していた筈の少女は彼に両の膝を貸したまま、
ソファのひじ掛けに突っ伏して眠っていた。

頭を預けたまま、視線だけで見上げてみる。
安心し切ったあどけない寝顔。
僅か聞こえるのは規則的な寝息。
狸寝入りにまんまと騙されて足元を掬われた、浅はかで愚かな――しかし、そこがまた愛らしい、少女。

ネウロは弥子に預けていた半身を起こし、その場で軽く伸びるをする。
殆ど寝ていないせいか普段より少し、身体が重く感じた。

「全く、余計な手間をかけさせおって……」

少し擦れた声でそう小さく呟いた後、少女の暖かな色をした髪をそっと撫でる。
そっと、不用意に起こさぬよう、普段より気をつけて。手袋越しに伝わる柔らかい手触りに、無意識的に目を細め。
「こんな単純な手にあっさり騙されるとは、貴様もまだまだだな。なぁ?ヤコよ」
「ん……ふ…っ」
魔人にしては珍しく優しい手の感触は夢の中まで伝わったらしく、眠ったまま、弥子は小さく微笑んだ。



その後、昼近くに目を覚ました弥子が自分がソファに横になり、肩まで毛布をかけられている事に首を捻り、
いつの間にか決まっていた賭けの勝敗に大きく落胆し、盛大な溜め息を吐くのはまた別の話。


初一人称。三人称的な所がちらほらと……。
二人並んで色気なく映画館ごっこをしている所を書きたかったのです。
多分彼女が兵器だったりする、某漫画の影響。そしてネウロサイドは若干蛇足。


date:2006.02.27



Text by 烏(karasu)