When I was…前日碑


本編に盛り込めなかったネウロのメールと、その後の行動二行


何を下らん感傷にしがみついている?
返信を求めないのなら、何故それを本文に書かない?

故に我が輩、非常に不愉快な感情に苛まれながらコレを書く羽目に陥っている。

時にヤコ、貴様の命はこの携帯そのものか?
例えば我が輩がコレを今すぐ分解し、床にたたき付けたならば、貴様の命は終わるのか?
我が相棒はたかが携帯一台が壊れたが為に死ぬのか?

言っておくが我が輩、貴様の携帯を探すが為に地上に出るのではない。

そこに『謎』さえあれば、貴様に電話が通じようが通じまいが、正直どうでもいい。

そうか、次に出会う貴様は相変わらず、携帯一台使わないと探し出せないような、砂にも満たない砂塵でしかないということか。

確かに――ただ毎日、他愛もないメールを送れという単純な命令さえも遂行出来ない貴様を、我が輩が見付けられる訳もない……か。


そこまでを書いたメールを送った後、彼は、小さく鼻を鳴らしてガツンと音が鳴る勢いで二つ折りの携帯を閉じ、自身の上着の胸ポケットへと乱暴に押し込んだ。
 そうしてしばし、こじ開けたばかりの新たな空間の裂け目から周囲を物珍しげに見渡し、その地平に靴先を踏み出した。
 ――胸の上で携帯が鳴る事は、やはりなかった。
時期不明。



Text by 烏(karasu)