海をあるくとおさま


長らく拍手だったものに加筆と修正。元ネタは詩なので改行多め。
子どもの設定/名前=翅那【シナ】/娘。見事なまでにオリキャラ。名前の由来は拍手07に。

ごっこ遊び


とぉさまダメよとぉさま。

あのね、そこは海なのよ。ゆかの上はぜんぶ海なの。

ほら、母様がね、あさにがんばってみがいたから、おひさまできらきらしてるでしょ?

 そこはぜんぶ海なのよ。なみがね、おひさまの光で、きらきらしているの。

 「ほう……それは気づかなかったな」じゃないのよ!

 気づかないとあぶないのよっ。おぼれちゃうもん。

 あかねちゃんのつくえが島でね、トロイがおっきなお船なのよ。

だから、トロイの上に、おいで、父様。

 え? 「机に乗るのは、感心しないな」って、父様、いつも乗ってるじゃない、靴のままで!

 それで母様によく怒られてる。

 むぅ、そんなにムッとしなくてもいいじゃない。だっておぼれちゃたいへんよ。

 う? とぉさまなんで、翅那のおようふくのえりを掴むのさ?

 何でかたぐるまにするのさ?

 う? ふんふん、へえぇそうなんだ。なぁんだ、やっぱり凄いのね、父様って。

 あ、母様帰ってきたわ。ねぇねぇ父さま、今のないしょのおはなしね、母さまにもおしえてあげていい?

それとも、お口をとじてしーいっ。ってしなきゃだめ

 いいの? じゃあね、すぐね、言ってくるわね。

 むぅ? あぁ、父様も一緒に行くのね。

「ねぇ母様! 父様はかたぐるまで海のうえを渡れるんだって!」


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「そりゃあ、こいつなら余裕でしょうよ……」
「本物の海で試しても良いぞ? 貴様を波間に沈めた後に」

元ネタ:「海を歩く母さま」金子みすず(金子みずず全集・V さみしい女王より)

金子みすゞの詩を改変して加筆。子どもらしい可愛い詩にピンと来て。
ややテンポ悪くなりつつも、子どもの不明瞭な文節を再現できて満足。


date:2009.09.13



Text by 烏(karasu)