竹見さまより相互記念に頂きました


『Bird in flight』の竹見さまより相互記念で頂いたお話です!
趣味全開に、「小さい子とネウロ」でリクエストさせて頂きました。

事の起こりは、ネウロがネットで見つけた、ある噂だった。
『金の斧銀の斧みたいな泉がある』
謎はないが、妙な気配を感じるというネウロの一言で、ヤコ達は某県の山間部にある小さな泉にやってきた。
「さ、先生。調べて下さいネ」
言うと同時に、ネウロはヤコを泉に突き落とした。
見た目より深い泉に落ちながら、ヤコは思った。
(謎が無いのに来たがるなんて、おかしいと思ったんだ。謎が無いなら、ヤツがやることなんて、私への虐待しかないんだって、どうしてもっと早く気づかなかったんだろう)
もっとも、気づいた所で、今と結果は変わらないのだけどね、と魔人に気に入られてしまった自分の運命を哀れむ。
そして、ヤコは気を失った。
***
「む?ヤコがあがって来ないな」
そろそろ1分が経とうとしている。
すぐに顔を出して、喚きたてるだろうという目算が崩れて行く。
「チッ、溺れたか」
主人に手間をかけさせるとは、奴隷としての自覚が足りんな、仕置きをせねばならん。
と、ウキウキと人工呼吸から始まる嫌がらせのプランを考えながら、ネウロは泉に入ろうとした。
その時、突然泉の底から光が昇ってきた。
***
「なんだ、そりゃ!」
事務所に吾代の叫び声が響き渡った。
ワナワナと指差すその先には、ぶかぶかのニットにくるまれた幼女。
その容姿は、女子高生探偵に瓜二つ。
ソファに座る助手の足の間にちょこんと納まり、左手で、男のスカーフを握り締め、右手にフランスパンを握り、あぐあぐと食べ続けている。
机の上には、バゲットが山積みになっていて、次々に幼女の腹の中に消えてゆく。
「見たとおりだが?」
飄々とした顔をする助手に、吾代は苛立ちを覚えるが、それをぶつけて無事で済むとは思われない。
「深くはきかねえ。巻き込まれんのはゴメンだからな。ほらよ、言われた資料、ここに置いてくからな。アバヨ!」
さっさと帰って、忘れよう。
かつての狂犬は、本能に従い、正しい選択をした。ただ一つの計算違いは、相手が何様俺様魔人様だった事だ。
数分後、女児服売り場に、スーツ姿にサングラスで変装したつもりが、かえって目立ってしまっている事に気づかない吾代の姿があった。
「ヤコちゃん、美味しいですか?」
「うん、おいしいよ!ありがと、おにいちゃん」
“ありえない…ネウロさんのデレデレ…ありえない…”
ガタガタと震えるあかね。
「おかあさんが迎えにくるまで、まだ時間はいーっぱいありますからねv次は、このケーキ食べさせてあげますよv」
吾代に、ヤコの好物をしこたま購入させたので、食べ物が山のようになっている。ヤコは、その光景にご満悦だ。
もちろん吾代は、もう用済みなので、請求書は望月の会社で処理しろ、と追い払った。
「ヤコちゃん、おにいさんとゲームしましょうか」
「うん、どんなの?」
「これから、10分間、僕のことを『おとうさん』と呼んでください。上手にできたら、いいものをあげますよ」
「いいもの?やるやる!」
“ヤコちゃん…”
「邪魔するよ」
そこへやってきたのは、笹塚と石垣だった。
「なんだ、こりゃ」
食べ物の山に驚く石垣の隣で、笹塚は、幼女を目にして固まった。
「ん?おい、誰だその子?あれ?探偵にそっくりじゃん」
笹塚の異変に気づかない石垣の発言。
しかし、それはネウロの思うツボだった。
「おとうさん、この人達、だあれ?」
「おとうさん?え?じゃ、この子、あんたと探偵の子供?」
「たんてい?わたし、おとうさんとおかあさんのこどもだよ?」
微妙に会話が噛み合っていないが、刑事二人はそれに気づかない。
ネウロは、幼女を抱きしめながら、笹塚にニッコリ笑顔で言った。
「今日は、何のごようでしたか?」
笹塚は、夢から覚めたように、ハッとした。
「あ、いや。こないだの事件の調書を、と思ったんだけど、子連れで事件の話もなんだから、今日はやめとくわ」
「すみません。では、後日こちらからお伺いいたします」
「悪いね、じゃ」
「あ、先輩、待って下さいよー」
一見、いつもと変わらない笹塚の態度。
だが、二人が出て行った後。

ずだだだだだだだんっ

「わーっ!笹塚センパーイッ!」
ドアの向こうから聞こえてきた音と声に、
ネウロはニタリとほくそ笑んだ。
「おにいちゃん、わたし、ちゃんとおとうさんってゆえたよ」
「ええ、えらかったですよ。ヤコちゃん。
ごほうびです」
ちゅっ
「ひゃは、くすぐったい」
頬にキスされて、ヤコは、首をすくめてむずがった。
その様子が、可愛くて堪らないので、
ネウロはクスクス笑いながら、ヤコの額や顎、頬、鼻に、チュッチュッと音をたててキスをする。
“犯罪です、犯罪ですよ!ネウロさんは人間じゃないから、刑法は適用されないのかな?”
あかねはすっかり混乱して、自慢の三つ編みももつれ始めている。
「んもう、おかえし!」
ヤコは、両手でネウロのスカーフを掴むと、
膝立ちで体を伸ばし、ネウロの顎にキスをした。
ネウロが、頬を染め、にっこり笑うと、
ヤコは何故だか嬉しくなり、さらにスカーフを引っ張り、ネウロの鼻に、頬に、キスを繰り返す。
二人は、お互いにクスクス笑いながら、口以外のあらゆる所に、啄ばむ様なキスを繰り返した。
「きゃはははは」
ヤコは、これがすっかり気に入った様子で、
笑い声をあげながらはしゃぐ。
“ネウロさん…普段はヤコちゃんにあんな顔、あんな事、絶対しないのに…”
あかねは自分を蘇らせてくれた恩人の性癖に不安を抱き始めた。
(あかね、いらん心配をするな)
“!”
その時、あかねにネウロの記憶が流れ込んできた。
***
泉から現れたのは、水色の髪の美しい男だった。
「あなたが落としたのは、この豊満なボディのジェニュインですか?それとも、この幼女ヤコですか?」
「いや、我が輩が落としたのは、我が奴隷のヤコだ」
「正直ですね。では、両方「いらん。元のを返せ。あれは我が輩のものだ」
「…だって、もう幼女にしちゃったんだよ」
「何?これは本物のヤコか?」
「大丈夫。真実の愛があれば、元にもどります」
「そんなものは無い」
「…あの、セオリー通りにやってくれないと、こちらも困るんだけど…」
「さっきから黙って聞いてれば…。ネウロ様、私より、そんな小娘(文字通り)の方がいいと仰るの?」
「そうだが」
「!」
「ジェ、ジェニュイン、落ち着いて!」
びしいっ
「ああっ!ムチはやめておくれよ、僕の美しい顔に傷がっ」
「お黙り!」
ばしいん
「あ、ネウロ。その子、自分が大人になりたいって思った時に、戻るから、頑張ってね。
うわぁ、ジェニー、ストップストップ!」
「もういいわ。次のカモが来るまで待つわよ!」
(というワケだ)
あまりの下らなさに、自分に体があれば、脱力感に苛まれるあまり、地に伏していたに違いないと思うあかねだった。
“でも、なんでそれが、その行動に?”
(まあ、見ていろ)
ネウロは、キスを止めると、ヤコに優しく語りかけた。
「ヤコちゃん、僕はヤコちゃんが大好きですよ。ヤコちゃんは、どうですか?」
「うん、ヤコも、おにいちゃん、だぁいすき」
「じゃあ、ヤコちゃんが大人になったら、僕と結婚してくれますか?」
「けっこん?お嫁さんになるの?」
「ええ。僕と、ずっと一緒にこうして暮らしませんか?」
「お菓子、いっぱいくれるの?」
「はい、ヤコちゃんの好きなだけ」
「一緒に、遊んでくれるの?」
「ええ、いつでも」
「さっきみたいに、チュウチュウしてくれる?」
「もちろんですよ。こうやってね」
額にキス。
ヤコは、嬉しそうに笑った。
「じゃあ、ヤコは早く大人にならなきゃ!」
その時、ヤコの体が光った。
***
「いやあああぁっ!何で私服着てないの?」
「知るか、我が輩にその貧相な体を見せるな、この露出狂が!」
泉に落ちた所で、記憶が途切れているヤコが気が付いたのは、ソファの上、ネウロの腕の中で、床にはバラバラになった見慣れぬ服の切れ端。
「どうせ、アンタ何かやったんでしょう!」
「うるさい、それよりさっさと服を着ろ」
「あ、そうだった、見ないでよ!って、服どこー?」
“ヤコちゃん、給湯室にほしてあるから”
「あ、あかねちゃん有難う」
わたわたとネウロから離れたヤコは、給湯室に駆け込んだ。
“ネウロさん、さっきと態度が全然違いますけど”
(フン、あんなもの、奴隷を元に戻す為の演技に決まっているだろう。新しい奴隷を一から捜すのも面倒だし、何よりヤコが失踪したとなると厄介だからな)
“その割には、楽しそうでしたが”
(ふむ、そういえば元に戻したら、手間をかけさせた仕置きをするのであったな)
“ヤブヘビ!ご、ごめん、ヤコちゃん…”
嬉々として給湯室に向かうネウロを見送ったあかねは、続いて聞こえてきたヤコの悲鳴に、溜息をついた。


以上、フェチズム仲間こと竹見様からの素敵な頂き物第一弾、相互記念にリクエストさせて頂いた「小さい子とネウロ」です。
元々青年と幼女という取り合わせと、子どもの世話をする(というか猫可愛がりで甘やかす)ネウロさんが好きで、
おまけにこれまた好きな、童話なテイストまで入れて頂いて、本当にいくら感謝しても足りない勢いデスデス!
竹見さま、素敵なお話をありがとうございましたv これからも宜しくお願いします。