in the zoological gardens


黄昏さま宅、「twilight time」にて、有り難くも13333番のキリ番を踏ませて頂きました!
パラレルのお子様たちが好きなので、その子ども達の更に小さな頃の話をリクエストさせて頂きました

「ねぇ、パパ。ボクどうぶつえんにいってみたいんだけど。」

父親の膝の上で絵本を眺めていた仁が父に話しかけた。

「そういえば行ったことなかったかな?」
「遊園地はあんたが好きだから頻繁に行くけど動物園はなかったかもね?」

弥子は茉莉を授乳させながら答える。

「そうか。では行ってみるか。」

それからしばらく経った晴天の朝、吾代がワンボックスカーで事務所にやってきた。

「ったくよー、朝っぱらから。おい!支度出来たか?」
「わーい、ごだいだぁ。おはよう。」
「おお、ジンか、朝から元気だな。化け物夫婦は支度出来ているのかい?」
「パパとジャスミンはばっちりだよ。ママはおべんとうのじゅんびがたいへんみたい。」
「ああ、吾代さん、おはよう。悪いけどこれ積むの手伝って。」

弥子は奥から大きな登山用リュックをズルズルと引きずってやってきた。

「おめぇ・・これ全部弁当か?」
「あったりまえじゃん!さあさ、手伝ってね。」

大騒ぎの準備が終わり5人はとある動物園へとやってきた。

「ねぇねぇ、ごだいぃ〜はやくはやく〜。」

仁は吾代の手を取り駆けだしていく。

「大丈夫だった?」
「何がだ?」
「ココよ、来たことなかったのは本当は躊躇していたからでしょ?」

弥子はネウロを心配そうに見つめて言った。

「我が輩もジンもジャスミンも地上の生物とは違う血が流れていることか?」
「・・うん。」
「確かに、動物達は人間とは違う能力を持っているから、我々を異質な生物だと判断するだろうな。」

ネウロは吾代に肩車をして貰いながら象を眺めている仁を見やる。
象は目の前の仁を威嚇するかのように大きな鼻を持ち上げて雄叫びをあげている。
しかし、仁はそれが威嚇だとは捉えておらず、吾代の肩の上でキャッキャと喜んでいるのだ。

「まあ、心配するような事はないだろうが・・。」
「・・うん。来ちゃマズかった?」
「・・いいや。貴様が気にするような事ではない。」

ようやく茉莉を肩に抱き上げたネウロと弥子が象の前にやってきた。
象はネウロの姿を確認すると急に大人しくなって座り込んでしまった。

「おやおや、この象は眠くなってしまったようだな。」
「もうねちゃうなんて、つまんないの。ねぇつぎはライオンみにいこう。」

仁は吾代に連れられてライオンの檻にやってきた。
ライオンは仁達を見つけると檻の前を行ったり来たりしながら、時々雄叫びをあげている。
やはり威嚇をしているようである。

「すごいや、やっぱりひゃくじゅうのおうだね・・。」

ところがネウロが近づくと借りてきた猫のように急に大人しくなった。

「・・つまんない。ごだいぃ、お猿さんを見に行こう。」
「ッテ!ジン、耳引っ張んなって。」

今にも跳びかからんとしていたライオンが急に大人しくその場に座りこんだのを見て興味をそがれた仁は吾代の耳を引っ張った。
引っ張られた耳をさすりながら吾代は仁を猿山に連れて行った。
猿たちは仁を見つけると辺りにあるモノを次から次へと投げつけてきた。

「フハハ、吾代。貴様、猿たちになにかいけないことでもしたか?貴様を敵だと思って居るみたいだが?」

イヤミな目つきで遅れて到着したネウロは吾代を茶化す。

「ケッ!俺じゃねーよ!おおかたおめぇ見て攻撃してるんじゃねーの?化け物だしよ。」
「ちょっ!吾代さん!」

弥子が注意したのも時既に遅し。
頭の良い仁はすべてを察してしまった。
今までの動物達の異変はすべて自分のせいなのだ。
仁は大声を上げて泣き出した。

「ごめんなさい、ごめんなさい・・ボクがいけないんだ。どうぶつさんたちをこわがらせたのはぜんぶボクのせいなんだ。」
「ちげぇよ!おめえは何も悪くねーって!気にすんな!こいつらがちょっと臆病なだけなんだって!」
「いいよ、ごだい。ボクわかってるから。はんぶんにんげんじゃないんだもん。しかたないよ・・。」
「・・ジン。」

ネウロは茉莉を弥子に預けると、吾代の肩から仁を抱き上げ自分の肩に座らせる。
そのまま、キリンのいる柵まで仁を連れて行った。

「パパ・・キリンさんも怖がるよ・・。」
「草食動物は敵が多いからな。しかし、見ろ?このキリンはなにもしてこないぞ?」

ネウロの言うとおりキリンは仁達が近寄ってきても黙々と草を食べていた。

「このキリンはココで産まれたのかも知れないな。おそらく敵の認識があまりないのかも知れぬ。」
「・・うん。」
「魔人だから威嚇したというだけでもあるまい。気にするな。必要以上に威嚇するものは何処にでも居る。」

ネウロは猿山の猿から相変わらず小石を投げつけられている吾代を指さした。

「見ろ?あいつは血の気が多いのを猿にすら見破られているみたいだぞ?クックック。」

吾代は堪らなくなって、ネウロ達のいるキリンの柵の前にやってきた。

「おい!今度はキリンを怒らせるつもりか?クックック。」
「ごだいぃ、キリンさんにはやさしくしてあげてね?」
「さすがはハイエナと言われるだけあるわ。フハハ。」
「ちげーよ!くっそぉ・・。」

キリンは吾代を一瞥したが、すぐに首を木の枝の方向に持ち上げて草を食べ続けた。

「クックック、このキリンは大物の素質があるな、貴様のような雑魚は相手に出来ぬと思ったらしい。」

ネウロはキリンの吾代へのそっけない態度を嘲笑する。

「くっそぉ・・。」

「ねぇー!そろそろお昼にしない?わたしお腹ペコペコ。」

少し遠くで弥子が叫ぶ。

「おやおや、ここにももう一匹、腹を空かせているヤコ(人間)が居たか。フハハ。」
「ごだいもごはんにしよう。」

3人は弥子と茉莉の待つパラソルのあるベンチに急いだ。


ネウロのお父さんぶりが板に付いて来ているのがらしいというか何というかw
黄昏さま、可愛いお子様達を本当にありがとうございました!
二人とも大きくなった今読むとまた、あったかな昔を切り取ったようで感慨深いデス