「熱血」「ハイテンションの悪役」「バトル」「解説兼ヒロイン」
これぞ(玩具を売る為の)少年誌の王道!
………適当な事言ってゴメンナサイorz
その後は、怪盗サイに都合良く服だけ破られたり、
調査中に事の弾みで卑猥な単語を言わされたりと……。
本当、思い出したくないような事ばかりが重なった事件でした…(弥子談)。
『壱!』
匪「なぁ桂木……」
弥「改まって何ですか? 匪口さん」
匪「……あのさ、『攻め』の反対は?」
弥「え…受っ、うーんと……守、り?」
――1時間後、事務所。
弥「その場は咄嗟の機転で切り抜けたけど……ホント、危なかったなぁ−」
ネ「……刑事にそのような質問を投げ掛けられている時点で、我が輩、既に手遅れだと思うのだが……」
『弐!』
弥「私ぃ服っ!しーふく!!!」
ネ「………」
魔人とのスーツデートを(命懸けで)拒否する探偵。
元ネタ:「隣の801ちゃん」(小島アジコ)
簡単な痛々しい設定:
・弥子ちゃんは中3〜高1。
・ネウロは多分高校生位で、2〜3歳以上は上。
とりあえずは、違う学校に通ってて、血が繋がって無いって所が大事。だと思う。
朝、弥子はいつものように玄関に出てネウロを見送る。
靴箱に備え付けられた姿見の前で制服の衿を直していたネウロは、弥子の発したいつも通りの台詞に、これまたいつものように反応してこちらに向き直り、ポンと頭に手を置いた。
「……ねぇ、ヤコ」
もう一方の手を膝につき、厭味な程に長身を屈めて覗き込んで来る端正な顔に浮かぶのは、慈愛の篭った無邪気な笑顔。
「……なぁ、に? ネウロ」
ハタから見れば歳相応のそれが意味する所を昔からよく知っている弥子は、ネウロを見上げたままでわざとらしく首を傾げ、引き攣った笑顔を返しながらもなるたけ無邪気な――まだ居間で支度をしているだろう母親がこの会話を聞いている可能性を意識した――声色で答える。
「いやね、僕の記憶が正しいならば、前にも言ったと思うのですが――」
ネウロ弥子の頭に置いていた手を肩に落とし、幼い子供に言い聞かせるような態度と声色で更に身を屈め――抱きすくめるようにして、弥子の耳に口唇を寄せる。
「こういう時は、『行ってらっしゃいませ、お兄様』と言え、と……」
「…っッ!」
耳に吐息が触れる度、びくり、と震える肩に口角を上げ身を離す。
最後にわざと息を吹き込んでやれば、弥子は僅かな呻き声を上げて大袈裟に飛びのき、両手を以ってして一方の耳を必死に押さえ込んだ。
潤んだ瞳で睨み付けてくる、悔しさで元々の造形よりも余計に歪んだ顔。
その余りの間抜けさと迫力の無さに、ネウロはクツクツと喉を鳴らす。
「……で、勿論もう一回、挨拶――してくれるん、ですよね?」
先程、弥子が自分にしたのを真似てきょとんと首を傾げ、再び無邪気な笑顔を作ってみせれば、弥子は赤く染まった頬で俯き、「分かったわよ!」と、些か声量を抑えて吐き捨てた後、コホン、と軽く咳ばらいをして背筋を伸ばし、ゆっくりと頭を下げる。
「――では、行ってらっしゃいませ……『ネウロ』様」
フローリングの縁ギリギリに乗せたニーソックスの爪先と、数センチ下のタイルに有る革靴とを視界に納め、弥子はしてやったりとほくそ笑んだ。
下げた見下ろすネウロはきっと、弥子が自分の思い通りにならなかった事に対し、憤慨しているか瞠目しているかのどちらかだろう。
「ざまぁみろ」、心底思う。
そう易々と言うことを聞かされてたまるか、と。
それと同時に、母親が家に居る今はそんなに酷い報復はされないだろう、という情けない計算も頭をよぎった。
せいぜい、この場で頭を叩かれるか頬を強く抓られるか……。
あ、学校から帰宅する時に、今日はなるだけ一人にならない方が懸命かも――
ポン、と。
軽い混乱を起こしていた頭に再び手が置かれる。
――握り潰されるっ!
目を閉じて咄嗟に身構えたが――弥子の予想に反し、手はぐしゃぐしゃと乱暴に髪を掻き混ぜただけで離れた。
「ふへっ?」
顔を上げる。と、以外と近くに翡翠色の虹彩が有って、少し心臓が跳ねた。
「……ちゃんと『様』を付けただけ、まぁ今日は許してやろう」
耳元で尊大に呟かれ、また項にゾワゾワとした悪寒が走る。
「ぅ……」
咄嗟に背けようとした顎を軽く掴まれて――ちゅっ、と、頬に軽く、何か温かくて柔らかな物が触れる。
それが何かを認識するより早く、拘束を一気に解かれ、フローリングの上へ倒れそうになった。
「では、行って来ますね……ヤコ」
半分まで開けた玄関ドアの前、立ち尽くす弥子を振り返ったネウロは、含み笑いと共に心底愉快そうに目を細め――あぁ、あれは猫を脱いで本性を表した時の笑みだ。
バタン、金属のドアの立てた固い音で金縛りが解ける。
力の抜けた両膝を折り、ぺたんと間抜けな恰好で玄関のフローリングに座り込んだ弥子が最初にしたことは、
「……誰ぁれが、『お兄ちゃんv』なんて呼ぶか!ぶぁ−かッ!!!」
ドアに向かってそう叫び、んべぇと赤い舌を垂らす事だった。
――その後、遅刻覚悟で丹念に顔を洗っただけでは気が治まらず、玄関に塩でも撒いてやろうとドアから顔を出した弥子が、
忘れ物を取りにあれから直ぐ引き返して来たというネウロと鉢合わせ、あの後全部を聞かれていたという事を知るのはまた別の話である。
そうして結局、二人して遅刻。
引き抜こうとがむしゃらに動かした指が、粘膜のどこかを突いたらしい。
弥子は軽く噎せ、掌に強く絡ませていた指先の力を僅かに緩めた。
その隙を逃さず、吾代は口腔内に深く含まれていた指を一気に引き抜く。
「うぁ……」
頬を上気させ、名残惜しむかのようにもったりと吐息を吐いた、赤く染まった唇から漏れた唾液が、形の良い顎を伝い落ちる。
熱に潤んだ瞳に光りは無く、焦点の会わぬ視線はそれでも、未だ強く吸い付かれ、濡れた吾代の指先に注がれたままで在った。
「ごだい、さ……」
視線に射ぬかれ、淫らに濡れた唇とその奥の感触を大気に触れ冷えた指先に思い出し――ゴクリ、思わず喉が鳴る。
「ぅ…てめっ…!? こいつに何食わせやがった??!!!」
気まずさを紛らわそうと顔を背けた勢いで睨み付けた化け物は、あくまで飄々と言葉を返す。
「なぁに、『アマザケ』という物を用意し、飲ませてやっただけだ。――生意気にも、『少しとろみが足りない』などとほざくので我が輩なりにアレンジしてやったがな……」
言いながら、最近新調したという奇抜な形の事務机に投げ出された、白に緑のラベルを貼った縦に長い袋には確かに見覚えが有った。
「それ……って、確か」
それは、少し前までこの事務所に大量に置かれていた「片栗粉」だった。
この前、目前で文字通りとろけている少女に頼まれてアシが付かないように処分した筈の――
「フハハ、我が輩の知らぬ間に消えた『失せ物』であったコレを、こいつが何処からか探し出してくれてな――」
言いながら、自身が座る机の黒い板を、同じく黒い手袋を嵌めた指で撫で上げた。